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ドレスは脱ぎ捨てた

更新はまちまち。

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暇な時は大抵昔のことについて考えている。あの頃の自分はどう思っていたとか、あの頃はこんな状況だったなとか、こんな人が周りにいたなとか、天気とか。去年、平日の真昼間に卓球してる公園で知り合ったおじいちゃんの家で飲んだ15年もののブランデーの味が忘れられない。おじいちゃんはタバコは吸わないがヤク中で、モルヒネ注射をよくしているらしい。パワーが漲るとかなんとか教えてくれたような気がする。2021年の5月はまだコートや分厚いダウンが必要なくらいには寒い時だった。私を含めて3人でおじいちゃんの家に向かった。バスで15分くらいのところにある、黄色い壁の集合住宅だった。周りは交差点でケバブ屋やドラストやスーパーやピザ屋があった。多分女の子だからという理由で、私にだけスリッパを用意してくれた。私たち3人は大きさも形もバラバラな椅子に座った。Herzlich willkommen in meinem Palast(ようこそ私の宮殿へ)と言ったおじいちゃんの部屋は狭くて、十数年も前の新聞や半分に割れた木のテーブルやCDなんかが山積みに置いてあってごちゃごちゃしていた。上にはセルビアのマフィアが住んでるとか。犬の写真や兵隊だった頃の写真や10代の頃に卓球していた写真を見せてもらった。30年40年前に流行していたような白の裾広がりのフレアパンツを履いて、ラケットを持っているおじいちゃんの写真を。おじいちゃんは私たちに色々くれた。ビールジョッキにボールペン、瓶詰めのシナモンのスティックなんかを。私たちはピザを食べてブランデーやビールやウォッカをたらふく飲んだ。バルカン半島のどっかの国のマフィアにもらったというブランデーをおじいちゃんは15年開封していなかったのに、私たちに飲ませてくれた。プラムが入ってるらしく、キツいアルコールの中に広がる甘い香りを覚えている。おじいちゃんはなんかのブランデーにレッドブルを混ぜて飲んでいた。そのあとはみんなで卓球をして帰った。その後も私には色々あったのだけれどそれは何も今書くことではないので割愛する。

後から分かった事だが、おじいちゃんはゲイで、私の当時の彼氏のことが好きだった。3人でおじいちゃんの家に行った時とは別の日に、家に1人で来いと言われて、告白されたらしい。確かおじいちゃんの宗教的な理由で、同性愛は禁忌だった。だからおじいちゃんは奥さんも息子もいる。ずっと隠してきたのだろうか?でもその後おじいちゃんは気が狂って、今はもう公園にも来なくなってしまった。その頃に4人で撮った写真を見ると、今は少し寂しい。