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ドレスは脱ぎ捨てた

更新はまちまち。

7/4

江國香織の好きな小説の一つに「東京タワー」という作品がある。江國香織の小説は細かく区切って読むことができるから、一度読み終わった本でも夜寝る前の少しの時間に数ページだけ読み返すことはよくあるのだけれど、最近この本をまたちゃんと最初から読み始めた。その中に「一緒に暮らしてはいなくても、一緒に生きていくことはできる」「誰と暮らしていても、私は一緒に生きたい人と生きる。そう決めてるの」という文があって、初めて読んだのは確か二年前だけれど、今回読み返してみてようやくこの文を自分なりに理解できるようになった。離れていても、例えばあの人が買ってくれたペンギンのぬいぐるみを抱きしめるとか、例えばあの人がそうしているように、食後にはカフェラテを飲むとか。恋人に対してだけじゃなくて、ピアノを弾いている時には、横で歌って教えてくれていた友人の声が聞こえてくる。今日コンビニでエナジードリンクを買おうとした時、私に卓球を教えてくれた人のことを不意に思い出した。初めて彼氏とその友達に連れて行ってもらった公園で会った時、お前は卓球やらないのか?と尋ねて、私にラケットを握らせた人。あの人がいつも飲んでいる、シュガーフリーの水色の方を手に取ってみる。その人の家の地下室で友達と卓球をしたことも、同時に思い出す。ビールを沢山買ってくれていて、3人で乾杯した時のこと。

一緒に暮らしていなくても、誰かと一緒に生きるというのは、こんな風に、自分の生活にその人の影を滲ませることなのだと思う。私は日本に帰っていて、他のみんなウィーンにいて、今はとても遠いところにいるにも関わらず、日々の暮らしに自分以外の人がいるのは幸福なことだ。