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ドレスは脱ぎ捨てた

更新はまちまち。

12/1 きな粉餅

2時間お風呂に入っていた。上がった頃には14時半を回っていた。今日は何もしていない。ただ起きてからベッドでゴロゴロしてままが作ってくれた三種類のチーズのリゾットを食べただけ。出かけるから準備しなくちゃね。今日は下地塗らなくていいや、本当は化粧する気自体起きない。でもコンプレックスは隠したい。コンプレックスを隠すためだったり自分をよく見せるためのそれは化粧というより作業だ。歯を磨くみたいに、パジャマからよそ行きのワンピースへと着替えるように、当たり前のこと。自分をよく見せるためのそれをしていて悲しくなるなんてことはあまりない。他人からよく見られた方がやっぱり嬉しい。これからマシなわたしになるんだ、という気持ちでそれをしている。そしてマシなわたしが鏡に映った。最後にクラランスのコンフォートリップオイル03を塗って完成。これは赤い口紅の中でも透明感とか透け感のようなものがあって、私の顔によく馴染む。お気に入り。

香水をつけたけれど、なんかうまくいかなかった。たぶん周りの人にはあんまり匂わないんだけれど、わたしにはすごく強く匂うようについてしまって、あー、なんだかなあという気持ちになってしまった。この香水は数年前にウィーンで買ったけれど、女の人がつけるより男の人がつける方がもう少し素敵だと少し前に気づいた。いや、わたしがまだ子供すぎるのかもしれない。26歳くらいになったら似合うかもしれない。

髪の毛を自然乾燥させるついでにモーツァルトピアノソナタK.V.332を弾いていた。ウィーンやザルツブルクの葡萄畑が浮かぶ。1楽章は、途中に少し強さのようなものもあるけれど、基本的には可愛らしい。可愛いには、可愛いをつくるための精神的な強さも必要なのかもしれない。聴きながらスキップしたくなるような。例えば晴れた土曜日の朝にこれを聴いて鼻歌を歌いながら部屋の掃除がしたい。例えば友達と入ったカフェにそれが流れていたら、私はまたそこに行きたくなってしまうかもしれない。

12月20日にウィーンのピアノの先生の門下生が集まってコンサートをやるから、それに向けての練習。今のところの出来はまぁまぁかな。当日までにきっちり練習していればきっと上手くいくだろう。暗譜で弾いていたけれど、あってる自信がなくて恐る恐る弾いてしまう。暗譜じゃなくても、やっぱり自信がなくて恐る恐る弾いてしまうんだけれど。

昨日の夜から今日の朝にかけて、そこそこ雪が積もった。19時半、雪の帰り道を歩きながら、雪を踏む時の音について話した。友達はさくさくと言った。わたしは、ほろほろだと思う。そう、スノーボールを噛み砕いている時のような。友達の頭上には、クエスチョンマークが浮かんでいた。別に分かってくれなくたって良い。

雪を投げ合ったりもした。水分の多いそれはわたしのコートに張り付いたかと思えばすぐに溶けてしまった。溶けきれてないそれを白い手が払ってくれた。私は手袋をしていたが、相手は手袋をしていなくて少し冷たそうだ。単純に楽しかったし、雪が積もっていることが思いのほか嬉しかった。なんだかんだ雪に喜んでいる自分の無邪気さに安心した。ふふふ、私はまだ16歳なのだ。あと、1週間は。

同じアパートの友達とまたね、と声をかけ合って分かれた。まだ20時前なのにおやすみと彼女が声をかけるから、いやまだはやいでしょ、と突っ込んだ。私とママはもう一階分階段を上がって玄関に入り、ブーツのファスナーを下ろして手袋を外しコートをハンガーにかけて、白のH&MBlack Fridayの時に買ったニットワンピースとこれまた白のユニクロのシャツ、それからスキニーを脱いでTシャツ短パンに着替えた。最後に口紅をティッシュで落とした。

 

グリーグのヴァイオリンソナタ3番の2楽章を譜読みした。二拍子。テンポが怪しい。あと拍数。いつもそうだ。譜読みの時に1番苦手なのが正確なテンポ、音符の長さを数えること。メトロノームを使っても、メトロノームの音が無機質過ぎるからかよく小節の境目が分からなくなってしまう。8月から1回もまだしてないのでピアノの調律をいい加減しなくてはならないのだけれど、調律師さんにコンタクトを取るのを毎日忘れてしまう。ママは知らない人に電話をするのが苦手だという。私は別に大丈夫。

友達が日本からとりあえずわたしの家に誕生日プレゼントを贈ってくれるようだ!すごく嬉しい。何回もありがとうと言った。本を頼んだ。江國香織の本を全部集めたいのだ。でもね本当は、わたしが今1番、本当に欲しいものはどんなに沢山のお金でも買えなくて、誰にも頼むことができないもの。考えると落ち込みそうになるけれどまぁしかたない。自分で手に入れるほかないのだ。

 

ここ1週間くらいずっと、寝るのが深夜を回っているから、日曜日くらいは少し早めに起きてピアノを弾きたいんだけれど、午前に起きられる自信がない。明日ちゃんと起きてからすぐ行動できるために、今日2回目のお風呂に入る。もう23時だ。1日がこんなにあっという間なことが、泣きそうになるくらい怖い時がある。みなさんはどうですか。

 

度数が高いから、母があんまりたくさん飲むことを嫌がっていたポーランドで買ったリキュール、ばれないようにこっそり飲んでいたのに、ついになくなった。でも瓶が重いからもうそんなに飲んだなんて気付かなかった。甘いから絶対カロリー高いんだけれど美味しかったなあ。

11/30 グリューワイン

グリューワインに最近ハマっている。

クリスマスマーケットで飲んでから虜になったと言っても過言ではないくらい、それはもうありえないほど飲んでいる。

1L入っているグリューワインの瓶を、もうわたしとままとで3本は飲んだ。わたしだけが飲んだ量も、きっと1Lは超えているだろう。

グリューワインとは、ワインに砂糖や蜂蜜やシナモンやクローブ、カルダモンに生姜、ローズマリーにタイムなど、十種類以上のスパイスを混ぜてギリギリ沸騰させずアルコールを飛ばさないくらいで煮たホットカクテル。相当にカロリーが高いことをもちろん分かってはいるんだけれど、本当にえらいほど美味しくて、やっぱり沢山飲んでしまう。どうして16歳が堂々と飲酒していてその旨を発言しているかといえば、オーストリアは16歳から飲酒及び喫煙が可能な国なので、つまるところわたしは合法だからだ。16歳から合法的に飲酒できるオーストリアは酒飲みの地を受け継いだ私にとって、なんて最高なのだろう。

ままの真正面に座り手短に夕食を済ませてから、食事用のテーブルの上に飾りついでにおいてあるグリューワインの瓶へ手を伸ばして、わたしが飲む分とままが飲む分を小さな鍋に流し込んで火をつける。黒色の鍋に広がる葡萄色を見ていると、なんとなく心が落ち着くし、早く飲みたいとうきうきしてしまう。ふつふつと小さく泡立ちはじめたら素早く火を消して2つの色も形も違う同じくらいの大きさのマグカップに注ぐ。当然ながら熱いのでグラスでは持てない。もはやグリューワインのない冬の夕食後なんて考えただけでつまらない。この間の土曜日なんて、目が覚めてからいきなり飲みたくなって、お昼ご飯とともに飲んでいた。わたしは飲酒するとぐずぐずになるからお昼から飲んだその日は当然何もできないししなかった。あ、買い物には行った。ここでの何もしないというのは、しなければいけない勉強やピアノのことなんだけれど、やっぱりお酒を飲むとぐずぐずになってできなくなる。

グリューワインを飲みながら読む江國香織は、いつもより数倍力強く、彼女の言葉がわたしの心に入ってくる。あの時はきらきらひかるを読んでいた。潔癖症でホモの旦那と、精神疾患でアル中の妻の話。

冬にしか飲めないのが惜しいけれど、確かに冷ましても美味しいのだがグリューワインは夏に飲むにしては濃厚過ぎるね。携帯の電池が残り3%だしもう寝ようと、部屋の中でつけていたろうそくの火を吹き消したら、少し焦げたような匂いが広がった。

Fruhling

春になった。3月1日。もうすぐ春ですね、という歌詞の有名な歌があるけれど、そんな前置きや変化の予兆ははなくて、昨日まで早く冬が終わらないかな、と思っていたはずなのに、3月になった途端に、私達が寝ている間に、昨日までの寒さが嘘のように、春になるのだ。この感覚を私は知っている。7月になった途端夏になる、9月になった途端秋になる、11月になった途端冬になる、季節はいつも私達の先を行く、置き去りにする、そんな感覚。私は冬が嫌いで、冬になった途端嫌な気持ちになる。あー、この冬はいつ終わるんだろう、あまり寒くないと良いな、なんて心が重くなる、けれど春や夏は嫌いじゃない。わくわくする。

春になって季節が変わってようやく年が変わった実感が湧いて、今年がどういう年になるのか誰に出会ってどこに行って何をするのか、どんな楽しいことが待っているのかな。どんな映画を観るのだろう、何に感動して何に悲しむのか。あまり怒りたくはないな。そういうことに想いを馳せるようになる。いつもそうだ。私にとって、12月31日から1月1日になるより、2月28日から3月1日になる方がよっぽど、ドラマチックで感動的だ。3月1日は2月28日のの翌日、延長線上に過ぎないのに、昨日まで身に纏っていた分厚いコートをもう羽織らなくて良くなるのだ。これだけで、心が軽くなる。新しい化粧品と新しい香水を身に纏い、新しい鞄を持って外に一歩踏み出せば、突然吹いてくる南風と、幼稚園児の声と真っ青な空。足取りが軽くて、速歩きしただけなのに、少し汗ばむ身体。暑がりの私はもう半袖でも良かったのではないか、と。電車から射し込む太陽の光にうたた寝。今日くらいは電車がいつも通り来なくても、許そう。