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12/9 無題

目が覚めた。いつから目が覚めていたのかはわからない。オフホワイトの天井が私を見つめていることに気がついたから。昨日20時くらいにコーヒーを飲んだからあまり深くは眠れなかった。薄っぺらなロールスクリーンと窓、それから私の部屋。遮られた外からは、昨日からずっと轟々たる爆音で風が吹いている。もちろんただ強いだけの風が、私の住んでいる築200年の元は宮殿を改装したアパートを吹き飛ばすなんてことなどあり得ない。私は安心して目をつぶって風の音を聞く。風の音は好きだ。外出予定のない日に部屋の中で強い風の音を聞いていると、自分は安全圏の中にいるのだと思う。そしてそこから出る必要もないのだと思える。
夢を見た。私に都合の良い夢。でも現実は私に都合悪い。こんなことは今までに何十回とあったし、きっとこれからも何千回とあるんだろう。残念に思いながらおもむろに立ち上がって部屋の中を意味もなくふらふらと巡回してから、ベッドにまた寝そべった。少し冷めて気持ち良い。でも眠るつもりはない、ただぼんやりしていたかった。だって日曜日だし、まだ11時だし。
手を伸ばして捕らえたのは他人の輪郭、ではなくただの空気。当たり前だ。だって今、手を伸ばした先に他人がいないから。こういうこと書いてるからといって他人にそばにいて欲しかったわけじゃない、でも、近くに誰かいそうな気がした。いや、もちろん幽霊とかじゃなくて。まだ夢を見ているのかもしれない。ううん、もうきちんと起きている。そのまま空気を撫でた。

月曜日から風邪を引いていた。体調はまあまあ。

友達がオススメしてくれた本を先週読んだのを思い出して簡単に感想を送った。ありきたりな言葉で。でも本心だよ、面白かった。昨日また読み返したもの。久しぶりにその人と会話したことも嬉しかった。
薄暗かった部屋がいきなり明るくなってびっくりした。きっと曇っていた空が晴れたのだろう。

起き上がって着替えて、髪の毛を巻いた。出掛ける用事はなくても、寝癖の髪の毛と前髪をダッカールで留めておでこを全開にしている私より、髪の毛を巻いて前髪を下ろしている時の私の方が愛せるからだ。自分の為に自分の身なりを整えるのは気持ちが良い。

そういえば突然に日本の家のことを思い出した。晴れた寒い日の午前10時頃、いや、9時だったかもしれない。寝起きで体温の低い身体をなんとか引きずって2階のリビングに上がり、カーテンを開けて窓際に座り込んで日向に当たって暖をとることが好きだった。太陽の光がリビングに差し込んで出来る模様を、この目でよく覚えている。
ジンクスを作るのが好きだ、いや、本当は好きじゃないしむしろやめたい。でも、つい、これがこうだからきっと良いことが起きる!とか、これがこうだから良くないことが起きるかも…と何かと理由をつけてしまう癖がある。喜びはともかく、理由のない悲しみというのは私にとって重くてつらくて、受け止めたくないし受け入れたくないし逃げたい。悲しみはいつも唐突で理不尽だと思う。だからどんなに些細でもいいから起きた悲しみに因果関係があれば、まだ、悲しみを受け入れられる。無理矢理納得させる為。
去年買ったワンピースが似合わなくなったことも、去年買った口紅が似合わなくなったことも、数ヶ月前まで毎日つけていた口紅を数週間ぶりにつけたら違和感を覚えたことも、数分前まで晴れていたのにたった今雨が降ってきたことも、

ひとりでベッドに寝転んでいると、自分のことが嫌になって、このままマットレスにでも溶けてなくなりたい、と思う時がよくある。牛乳とリキュールを割った寸胴のガラスのコップ。琥珀色の液体の中に滑り込みたくなる。

あー、生きてるって実感、したいね。例えば?23時に窓を開けて曇り空を見つめながら冷たい夜風に当たっている時。私のアパートの下を歩く背の高い黒人の男を見下ろす。彼らがこちらに気づくことはない。電気を消して暗くしたぬるい湯船の中に入って大声で歌を歌っている時。暗い部屋のソファの上で日記を打ち込んでいる今。0時、誰かの隣を歩いていた時。はしゃぎながら車に積もった水分の多い雪を友達に投げた時。外套についた雪を払いあった時。

音楽でも聴きながら、夜ご飯までソファに身体を沈めてまたぼんやりしていようと思う。今日はぼんやりしたり と ピアノ弾いたり の繰り返しでした。